キベベワールド

「メガネの一心堂」の店長が、タメになること・ならないことをつづります

1/3?

「プリズムは斜位量の1/3にするのがいいという話を聞いたのですが」

そのようなことを、お客様から言われたことがあります。
今はネットでいろいろな情報が飛び交っていますから、どこかで拾ってこられたのでしょう。

実際に、そういったニュアンスで書かれているHPやブログを幾つか目にしたことがありますが、そもそもプリズム量というのは、いろいろな測定データなり、ユーザーの反応なりを踏まえて最終決定していくものであり、画一的に「斜位量の1/3」としてしまうのは、どうなのかなと感じます。

たとえば、何らかの理由で、なかなかプリズム処方量を決められず、ひとまず1/3を入れてみて、しばらく様子をみるということであれば、それは「1/3が好ましい」という理由付けにはなりません。

この「1/3」を提唱している記事には、その根拠が示されていないものがほとんどなのですが、中には「シェアードの基準によると」と書かれているものもありました。

なんだか信憑性がありそうですが・・・

シェアードの基準(Sheard's criterion)というのは、Sheardという人が提唱したものですが、『Binocular Anomalies 4th edition』77頁より引用してみますと、

ixy_20140810_06.jpg

「He proposed that the compensating vergence "reserve" should be at least twice the demand (heterophoria) to be physyologically sufficient.」と記されております。

関真司O.D.著『視機能データの分析と対処法』では、

ixy_20140810_07.jpg

上記について「正常な両眼視を維持するためには、輻輳余力または開散余力が斜位の2倍の量と等しいか、またはそれ以上なければならない」と解説されています。

ここでは、これ以上の具体的な説明は省きますけれども、つまり、どこにも「斜位量の1/3」とは言及されておりません。
ですから、「シェアードの基準によると」というのは誤りです。

「1/3」というキーワードでピンとくるのは、パーシバルの基準(Percival's criterion)ですが、

1408101.jpg
Pacific University Opt.617 講義資料より

これとて上述の書籍では「全相対融像幅の中央1/3の間をドンダース線が通過するのが、正常な両眼視の条件」と解説されており、斜位量は関係ありませんから、いずれにしても「斜位量の1/3」の根拠にはなりません。


このような、ネットその他で拾われた不正確・不十分な情報を信頼して来られるユーザーさんは、それが正しいと思われているため、こちらが別の意見を申し上げても、なかなか理解を示していただけないことがあります。
いくら理論的に説明しようとしても、基礎知識のないかたに専門的な話をするのは無謀ですし。

かく申す私自身、これまで散々、えらそうに講釈を垂れてきているわけですが、中には誤解を招くような内容もあったかもしれません。
正しい情報を伝えることの大切さを、折に触れ痛感しております。


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  1. 2014/08/10(日) 22:51:39|
  2. 視機能・視覚・検査など
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