キベベワールド

「メガネの一心堂」の店長が、タメになること・ならないことをつづります

ビジョントレーニングは、「逃げの一手」?

※今日の内容は、一般の人には、いつも以上に意味不明と思いますがご容赦ください。※


「アメリカ式はトレーニングに逃げる」という意見があるらしいことを小耳にはさみました。

細かな背景というか内容はわかりませんが、おそらく「両眼視機能に関する不具合に関して、21項目検査を核としたアメリカ式のアプローチは、その不具合への対処法として視機能トレーニングを選択することで済ませるケースが多い」といった意味合いなのかなと推察します。

「逃げる」という言葉をどういうニュアンスで使われているのかは不明ですので、ポイントがずれているかもしれませんが、これについて、私の考えるところを述べてみたいと思います。

なお、ここでいうトレーニングは、斜視・弱視といった「両眼視機能異常」に関するものではなく、輻湊・開散や調節機能の不具合による「両眼視機能不良」に対応するものとします。
治療の一環として必要があるから行なわれる「両眼視機能異常のトレーニング」までをも「逃げ」というのはおかしいですから。
また、当然ながら視覚認知関連のトレーニングも除外します。


まず、両眼視機能不良に関するトレーニングというのは、多くの先人たちによって研究・検証されてきているものであり、書籍も普通に出版されていますし、両眼視関連の学術書にも記載されています。
(アメリカでは、ビジョンセラピーと称することが多いように感じますが、同義とご理解ください。)

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『BINOCULAR VISION AND OCULAR MOTILITY』 Gunter K. von Noorden

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『BINOCULAR ANOMALIES』 John R.Griffin & David Grisham

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『Clinical Management of Binocular Vision』 Mitchell Scheiman & Bruce Wick

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『APPLIED CONCEPTS IN VISION THERAPY』 Leonard J.Press

ですから、決して怪しいもの・根拠のないものではありません。

この表はパシフィック大学での「両眼視機能不良に対する対処法」に関する講義資料の一部です。

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はっきり読めないでしょうし、細かな解説は省きますが、すべてのケースに対処法としてトレーニング(VT)が挙げられています。
この講義は、実際にトレーニングに従事しているドクターがされていたこともあり、どちらかというと「トレーニング重視」の傾向があることは否めませんけれども、どんなケースでもトレーニング一辺倒というわけではありません。

トレーニングというのは、足りない筋力を鍛えたり、現状の視機能システムを破壊して新しいシステムを構築したりするために、一朝一夕には効果が出ません。
本人のやる気と適切な指導がなければ効果が出にくいものであることは事実です。

また、先の表が「絶対教義」ということはありません。

Convergence Excess(輻湊過剰)と呼ばれるケースは、先の表では「プリズムは使わない」となっていますが、

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関真司著『視機能データの分析と対処法』では、「BOプリズム処方」は「遠見での両眼視に悪影響を与えなければ」、「あり」だと記されています。

つまり、トレーニングが優先される場合もあれば、即効性を求めてプリズムや凸レンズ・凹レンズをうまく使う場合もあるということです。


両眼視といえば「プリズム」が頭に浮かぶかたも多いと思いますが、遠見と近見とではユーザーが許容できるプリズム量に差があるような場合、「遠近両用のメガネを使いたい」と言われても対処が困難なことがありますし(距離に応じて使い分ける必要が出てくる)、また、調節不全等の調節システム改善が目的であれば、プリズムの出番はありません。

ですから、プリズム処方も万能ではないのです。

無論、だからといってプリズム処方を否定しているわけでもありません。

逆に上下方向の眼位ずれに関しては、トレーニングの効果は得られにくいですので、プリズム処方のほうが優位と考えます。

またプリズム処方の目安となる「プラッツの基準」、外斜位に有効といわれている「シェアードの基準」、内斜位に有効といわれている「バーシバルの基準」など、プリズム処方を念頭に置いたアプローチ法もありますし、OEP分析と呼ばれる手法においては、球面度数によるアプローチが試みられます。

(なお、どのようなケースであっても、まず最初になされるべきことは「適切な屈折異常の矯正」であることは、言うまでもありません。)

以上のことから、アメリカ式のアプローチはケースに応じてさまざまな対処法を考えるものであり、決して「トレーニングに逃げている」わけではないことが、お分かりいただけるかと思います。

「いや、そういうことではなくて、視機能に不具合があるのではといろいろ調べてみたけれど、これといった決定打が見つからない場合に、トレーニングを勧める人もいるでしょう?それは逃げていることになるのではないですか?」
ということであれば、それはトレーニングを勧めた人の考えかたであって、それを以って「アメリカ式は」と一括りにいうのは、「木を見て森を見ず」でしょう。

繰り返しますが、細かい背景がわかっておりませんので、私の一方的な意見だとは思います。
ですが、どのような背景・意図があるにせよ、「逃げる」という言葉は不用意であると考えます。



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  1. 2013/10/20(日) 23:39:27|
  2. 視機能・視覚・検査など
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