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キベベワールド

「メガネの一心堂」の店長が、タメになること・ならないことをつづります

かわいそう?

だいぶ前のことですが、当店のホームページをご覧になったというかたから電話がありました。
当方のご意見を聞きたいとのこと。

状況としては、

・小学生のお子さんが、学校の視力検査で引っ掛かった
・眼科へ行って検査を受けたところ、メガネを掛けたほうがよいと言われ、眼鏡処方箋を渡された
・主人はメガネを掛けさせたほうがよいのではと言っているが、私(その子のお母様)としては、メガネを掛けさせたくない

といった感じでありまして、「どう思われますか?」ということで見解を求められたわけです。


お手元に、眼鏡処方箋があるというので、度数をおうかがいしてみました。


眼鏡処方箋というのは、たとえば、こんな感じのものですね。

IMG_9212.jpg


処方箋に記載されている度数は

右 S+1.00 C-3.00 AX180
左 S-0.50 C-1.00 AX180 

だそうです。(実際にお聞きした度数とは、一部変えておきます)

眼科での検査においては、
遠見裸眼視力は、右が0.2で、左が0.8。
近見裸眼視力は、右が0.3で、左が0.9。
上記の度数を装用すれば、両眼ともに1.2が得られるとのこと。


この情報を踏まえて「メガネを掛けたほうがよいでしょうか?」と尋ねられたら「掛けるべきです」と私は答えます。

この度数は、たとえば、
右 S-0.50
左 S-0.50
などという度数と同じレベルで語れるものではありません。


幸いなことに屈折性弱視にはなっていませんが、遠くも近くも右眼の視力が低いですし、この状況では両眼単一明視は困難です。
たとえば微妙な立体感は得られにくいですし、眼精疲労も生じやすくなるでしょう。
年齢を重ねていっても同じような度数が残っているとしたら、そのときになってこの度数のメガネを掛けようとしても違和感が強くて慣れるのにかなり苦労をすることになりますし、装用感を重視した低矯正の度数でないと掛けられないかもしれません。
視覚システムの正常な発達を促すためにも、早く眼鏡装用を開始してもらいたいところです。

ちなみに、お子さんはどのようにおっしゃってるかとお尋ねしてみると「右眼がちょっと見にくい」と訴えているそうで、もう迷うことはないと思うのですが、こうした一連のコメントをお伝えしますと、「実は、同じようなことを眼科の人にも言われました」そうで。
そりゃ、そうでしょう。


お母様が、メガネを掛けさせたくないと考えておられる理由は何かとお尋ねしますと、

・自分自身がメガネを掛けておらず、メガネに対する抵抗感がある
・メガネを掛けると度が進んでしまうので困る

だそうです。
正直なところ、よく聞くパターンです。

「メガネを掛けると度が進む」ということを立証するのは、クローン人間を用意してメガネを掛けた場合と掛けなかった場合の度数変化を追っていかないと難しいのではないかと思いますし、私個人としては、掛けようが掛けまいが進む人は進むと考えています。
少なくとも、このお子さんに関しては、そんな先のことを心配するよりも、今対策を打つことが大切です。

自分が嫌だから子どもには掛けさせたくない、なんていうのは論外でしょう。
「メガネを掛けさせるのはかわいそう」などと言われるかたもいますが、本当にかわいそうなのは正しい視環境を与えてもらえない子供さんであることに気づいてもらいたいものです。


約30分ほど、そんなお話をしました。
受話器を置いてから、もしかしたら、お母さんはメガネの必要性については先刻承知で、もちろん掛けさせるつもりでいるけれど、ただ自分の中にあるもやもやした気持ちを聞いてもらいたいだけだったのかもしれない。
だから、話の持って行きかたとして、もっとお母さんに同調してあげたほうがよかったのかもしれない、そんなことも思いました。


それから半年くらい経った頃でしょうか。

「以前もお電話した者なんですけど」と電話がありました。
電話の主は、このお母さん。

「子供が、見にくいというので眼科へ連れて行ったら、やはりメガネをすすめられた。どう思いますか?」
というご質問でした。

思わず「えっ、まだメガネ作ってなかったんですか?」と言っちゃいました。
本当に、メガネを掛けさせるのが嫌なみたいです。

結局、以前と同じ話をすることになりました。

その後、どうなったのかはわからないのですが、そのお子さんも、今は中学生くらいになっていると思います。
適切なメガネを装用されていることを願ってやみません。


お子さんにメガネを掛けさせることに抵抗感のあるかたが多い、その気持ちはわかります。
けれど、その抵抗感ゆえにメガネを与えるのを躊躇することで、一番つらい思いをするのはお子さんです。
適切な視環境を与えてあげることは、保護者の務めの1つではないかと思います。

その務めを果たしていただくため、私たちは精いっぱいのお手伝いをいたします。


  1. 2011/09/18(日) 23:36:30|
  2. 視機能・視覚・検査など
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